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うこん学術資料


    ■世界各地での呼び名

    ターメリック (ウコン[鬱金]、キゾメグサ[黄染草]) Curcuma domestica VALETON (=Curcuma longa KOENG non LINN.)  (Zingiberaceae,ショウガ科)

    (英) Turmeric,Curcuma
    (インド)
    [サンスクリット]Harida,Nisa,  [ヒンズー]Haldi,   [ベンガル]Halud,Haldi,  [アッサム]Halodhi,  [オリッサ]Haldi,    [マラッタ]Halad,Hald Color e,  [グジャラート]Haldar,Halada,   [パンジャブ]Hald,Haldar,Halja,Haldi,Bassar,  [テルグ]Pasupu,   [マラヤラム]Manjal,Mannal,Marinalu,   [カンナダ]Arishina,  [タミル]Manjal
    (スリランカ)  [シンハリ]Kaha
    (マライ)Kunyit,Kunjit,Kunir bentis,Tem Kuning,  [セマン族]Tius,   [サカイ族]Renet
    (インドネシア) [ジャワ]Kunir,Kunir bentis,Temu Kuning,   [スンダ]Kunyir,Koneng temen
    (タイ) Kamin
    (ベトナム)  [コーチシナ、アンナン、トンキン]Nghe,Huynh khuong
    (カンボジア) Romiet
    (ラオス) Khi min
    (ドイツ) Kurkuma,Lange Safranwurz
    (フランス) Curcuma,Curcuma allonge,Safran des Indes
    (スペイン) Curcuma
    (ポルトガル) Curcuma
    (イタリア) Curcuma
    (中国) 鬱金、Yu chiu

     



    ■概説

    ターメリック〈Turmeric〉の根茎は、熱帯では食物の香辛着色料、ことにカレー粉の成分として不可欠なもので、黄色の染料としても世界的に知られていた。  
    英名Turmericは欧州起源の名で、中世ラテン語のterra merita(“土地の恵み”の意)から、古英語のtarmaretを経て導かれたものである。
    本種の根茎に対する生薬上の漢名は鬱金で、和名のウコンはその呉音読みであるが、本草学者は漢方のキョウオウ(薑黄)、すなわちハルウコン〈Curcuma aromatica SALISB〉の根茎をウコンの同類生薬として扱ったため、ときに両植物が混同されているから注意が必要である。
    同じく英名のCurcumaはウコン属Curcuma LINN. の一般名であるが、とくにターメリックを指す。
    またターメリックは食品着色芳香料として同じく黄色を表すサフラン〈Saffron,Crocus sativus LINN〉の名を借りてIndian saffron(英)、Safran des Indes(フランス)、Lange Safranwurz(ドイツ)、サフラン(大和本草)などの名もある。なお和名のキゾメグサは琉球物産考から出たものである。  
    属名のCurcumaは黄色の意で、アラビア名Kurkumをラテン語化したものである。
    また種小名domesticaは家事の意で、家庭園に多く栽培されたことから出たもの、longaは長いの意で、英別名のLong turmeric,フランス名のCurcuma allonge,ドイツ名のLange Safranwurzなどと同じく、恐らくは根茎の形状から出たものと思われるが明らかではない。  
    リンネ〈K.v.LINNE〉氏の命名したCurcuma longa LINN.の学名は、ヘルマン〈P.HERMANN〉氏がセイロンで観察したある種の植物でターメリックではなく、ケーニッヒ〈KOENIG〉氏の記載したCurcuma longa KOENIGが恐らくは真のターメリックであろうとされ、シノニムとして Curcuma longa KOENIG non LINN.の学名もあるが、longaの種小名が他種と紛らわしいことを考慮して、バレトン〈VALETON〉氏は1918年に新しい学名Curcuma domestica VAL.を提唱した。


     

    ■沿革および近況

     ターメリック〈Curcuma domestica VAL.〉は南および東南アジアに原産したとされているが、真の野生は知られていない。
    現今の栽培品は永く栄養繁殖と選抜を重ねてきたもので、遺伝的にはある不明の原種と、インドに野生するCurcuma aromatica SALISB.(2n=42)との交雑から生じた3倍体とされており、ひとつの栽培起源種〈Cultigen〉であると見なされている。そしてインドの栽培起源が最も古く、また多く栽培されていることからみて、ターメリックは作物としてインドに生じた可能性が高い。  
      古代に中央アジアで遊牧生活を送っていたアーリア族〈Aryan〉は、もともと太陽崇拝者〈Sun-worshippers〉であったが、紀元前2000年頃インド北西部に移動定住するに至った。彼らは太陽の色(黄色)を神聖なものとして扱い、インドでターメリックを発見してその黄色い根茎を、誕生、結婚、葬儀、豊作を祈る農業の祭りなどの時、体を染めたり供物を着色するのに用いた。
    さらに西へ向かったアーリア族の一派は、近東において同じく黄色素を産するサフラン〈Safron〉、あるいはベニバナ〈Safflower〉を発見し、それらを神聖なものとして扱ったが、いずれも同じ太陽崇拝の思想からのものであった。インドのターメリックはサフランやベニバナに比して生産される黄色素の量が多く、栽培可能の範囲もインド全土の4分の3にも及んでいることから、彼らによって重要作物として大いに選抜改良が加えられた。しかしインドにおけるターメリックに関する記載は、ようやく4〜5世紀になってからサンスクリット語による著書に現れている。  
      バイサー〈Ibn BAITHAR〉氏(1200)は、10世紀当時ペルシアではターメリックの根をAI-hardと呼んでいたとの記録を紹介しているが、これはインド語系であることが明らかであり、またイラク〈Iraq〉のバスラ〈Basra〉で、人々はターメリックをAl-kurkumすなわちサフランと同名で呼んでいると記している。
    さらにガルシアダオルタ〈Garciada ORTA〉氏(1563)は、ターメリックの主たるインド名を紹介したうえで、インドのカナノール〈Cannanor〉やカリカット〈Calicut〉には豊富にみられる一方、ペルシアやアラビアではターメリックがインドからの輸入品として知られるのみであると言っている。
    これらはインドから西のこの地方では、サフランは生育するが、ターメリックが生育しなかったことを示している。
      インドではアクバル〈AKBAR〉大帝時代(1556〜1605)に、規則〈The Ain-i-Akbari〉によってターメリックの品質に応ずる価格が定められており、当時すでにターメリックはきわめて一般的なものとなっていたことがわかる。
    今日インドは世界で最も多量のターメリックを産し、ほとんど全土に普及しているが、とくにマドラス〈Madras〉、アンドラプラデシ〈Andra Pradesh〉、マハラシュトラ〈Maharashtra〉、西ベンガル〈West Bengal〉およびオリッサ〈 Orissa〉の各州に多い。  
      紀元の初期ごろ、インド人移民がジャワでヒンズー王国〈Hinduized kingdoms〉を築いたとき、インドにおけるターメリックとその儀式的利用を東南アジアへもたらしたが、さらにポリネシア民族がこれを大平洋諸島一帯へ広げ、遠くハワイ〈Hawaii〉やイースター島〈Easter Island〉にまで伝えた。
    ソウファ〈D.E.SOPHER〉氏(1964)によればセレベス〈Celebes〉、モルッカス〈Moluccas〉およびポリネシア〈Polynessia〉におけるこのようなターメリックの利用はきわめて古くからあり、インドのアーリア族との関連が明らかにうかがわれるという。  
     中国への伝来は唐代(618〜907)の初期で、唐本草(新修本草、659)にはじめて記載され、蜀地および西戎に生ずるとある。中国ではまず雲南〈Yun-nan〉および四川〈Szechuan〉の暖かい谷間地帯に広まり、その後華南から台湾にかけて栽培されるようになった。
      マルコポーロ〈MARCO POLO〉氏は1280年国内旅行の途次、福建省コンチャ〈Koncha〉においてターメリックを見たと記録している。その後、マライの中国人は、ショウガとともにターメリックを市場への出荷目的で多く栽培した。
    1778年にケーリッヒ〈KOENIG〉氏は、マラッカ〈Malacca〉付近の中国人の園できわめて普通に栽培されていたことを認めている。  
      ターメリックは8世紀に東部アフリカに達したが、マダガスカル〈Madagascar〉のベチレオ〈Betsileo〉族がターメリックを利用する方法は、同族がアフリカとマライの混血であるだけに、明らかなマライ・ポリネシア起源〈Malayo-Polinesian origin〉であるという。
    また、西アフリカへ達したのは13世紀のことで、主として海岸地方に栽培されている。アラビア人はターメリックをチャド湖〈Lake Chad〉付近にまでもたらしたといわれているが、ダルジエル〈DALZIEL〉氏(1926)は、この辺りがターメリックの栽培地としては乾燥に過ぎていたので、単に染料としての乾燥品ではなかったかと言っている。  
    また西インド諸島〈West Indies〉では、1783年エドワード〈EDWARD〉氏によってジャマイカ〈Jamaica〉に導入された。そして今日ではすでにターメリックの野生化したものも見られるという。  
    ちなみにわが国のターメリックに関する記載では、物類品隲(平賀源内著、1762)、に享保年間に渡来したとあるが、すでに大和本草(貝原益軒著、1708)には、シャムから渡りサフランという、染物に用いる。唐人は魚肉の料理に用い、寒さを恐れ寒国には適さない旨の記載がある。現在沖縄、屋久島、および九州南端などに栽培されている。  
    現今世界におけるターメリックの最大産地はインドで、栽培面積5.7万ha、年間10万tを産し、うち0.5〜1万tを輸出している。輸入量の多いのは英米両国で、年間各500t以上に達し、シンガポール〈Singapore〉、バーレン〈Bahrain〉、クウェート〈Kuwait〉その他中東の国々がこれに次ぐ。なおスリランカ〈Sri Lanka〉およびパキスタン〈Pakistan〉は、以前インドから相当大量を輸入していたが、近年では自国内での生産がふえている。
     


     

    ■種類品種

     ウコン(クルクマ)属〈Curcuma LINN.〉は根茎を有する草本属で、約70種あり、主にインド・マレイシア地域〈Indo-Malaysian region〉に分布する。うち最も重要な種はターメリックで、他にもこれに類した種で野菜やでん粉料として利用されたり、特に香辛・香味・着色料に使われるものが多い。  
      ターメリック〈Curcuma domestica VAL〉は、一般的に明らかな品種に分けることは難しいが、大きく分けて、根茎の質が軟らかくて薬味(特にカレー)の必需成分として使用されるものと、根茎の質が硬く、色が濃くて染色料として使用されるものとに分けることができる。
    インドのマラバル〈Malabar〉一帯とくにコチン〈Cochin〉から出荷されるターメリックは一般に根茎が大きく、マドラス産〈Madras turmeric〉とともに市場で好評を得ている。ビハール〈Bihar〉州には在来種〈desi〉とパトナ〈Patna variety〉と呼ばれる品種があるが、後者は色が濃い特長があって産出量も多い。またマハラシュトラ〈Maharashtra〉で栽培されている品種には2つある。ひとつはロカンディ〈Lokhandi〉といって、根茎の色が鮮やかで質は硬く、染料として代表的なもので、もうひとつは色が淡く、質は軟らかくて薬味用であるが品種名不詳である。  
    さらにベンガル〈Bengal〉州からオリッサ〈Orissa〉州のカタック〈Cuttack〉へかけて、次のような品種がある。クラプリア〈Kurapuria〉という品種の根茎は丸形で、掘り上げ前5ヶ月間も地中におくことができ、栽培中のときに水牛の血が肥料として施されるという。ダンナ〈Dhanna〉は最も香りがよく、高く評価されており、ガンガクリア〈Gangakuria〉は根茎が長形、ハヅワ〈Hadua〉は根茎が丸形で、香りがきわめて強いが調理には用いられていない。  
    次にターメリックの近縁種で食用に供されるものは少なくないが、うち野菜として、あるいはターメリックと同じく香辛料として利用されるものを挙げると次のようになる。

    1) Curcuma alismatifolia GAGNEP   
      カンボジア、ラオス、タイなどで花を野菜として使用する。

    2) Curcuma amada ROXB  
      (英) Mango ginger  
      (インド)  [ヒンズー]Am-haldi、Amada、  [マラッタ]Amba-halda、  [デカン]Amki-adrak、  
             [テルグ]Mamidi-allam、  [ボンベイ]Kajura gauni  
      インドのベンガル〈Bengal〉、ヒル〈Hill〉地帯、あるいはコンカン〈Concans〉に原産したもので、インド内に広く栽培されている。
     1年生で根茎は太く円筒状で、熱すると橙色になり、生のマンゴに似た香りがする。地上部は高さ60〜90cm、花は淡黄色である。根茎を潰物〈Pickle〉にしたり、薬味や薬物としても使用される。

    3) Curcuma aromatica SALISB  
      (英) Yellow zedoary 
      (インド)  [サンスクリット]Vana haridra、  [ヒンズー]Jangli-haldi、Ban haldi、  
             [ベンガル]Banhalud、  [カンナダ]Kasturi-arishnia、  
             [タミル]Ranhalad、 ハルウコン、キョウオウ[姜黄、薑黄]  

     インドのベンガル原産といわれる宿根草本で、インドをはじめ熱帯各地で栽培されている。
    ターメリックに非常によく似ており、昔のアラビアの医師はこれと混同していたらしく、またわが国でも薑黄と鬱金とを区別しない記載が見られるが、葉の裏に伏毛〈Adpressed hair〉を密布し、各苞内に2つの花が咲き、ターメリックが6〜11月に開花するのに対して、4〜6月の葉の出る前か同時に開花する点などが主な相違点で、ハルウコンの名もここから出た。またターメリックより全体に大形で高さ1m以上、葉も更に大きく、先端は尾状にとがっている。花びらは白色に紅のぼかしがあり、根茎は淡黄色の塊状で、ときに分岐し、内部は濃黄または淡褐色である。
      インドでは南部のマラバル海岸アルワエ〈Alwaye〉、およびコチン〈Cochin〉の北東部などで栽培されることが多く、集散地はマイソール〈Mysore〉、ウイナード〈Wynaad〉などであった。欧州へは1804年に導入され、わが国へは弘化年間(1844〜1847)に渡来したという。ターメリックの代用品として食品の賦香や着色に、あるいは染料として、または健胃、通経など薬用としても使われる。

    4)Curcuma mangga VAL.et ZIJP  
      (マライ)Temu pauh 
      (インドネシア)  [ジャワ]Temu mangga,Tem poh,Temu bajangan,Temu lalab,  
                 [スンダ]Koneng joho, Koneng lalab,Koneng pare,
    マンゴーガジュツ  マライ、インドネシアなど東南アジアに原産した草本で、ジャワでは栽培もされており、市場に売られている。
    植物体はインドのCurcuma amada ROXB.によく似ていて混同されがちである。マライ名のTemuはターメリック類の総称名、pauhはマンゴ類〈Mangofamily〉の1種の名から採ったものとなっている。
    根茎の内部は黄色で、若い茎とともに生で食べ、またマライではカレーライスに添える1種の冷野菜〈Lalab〉にしたり、シチュー〈Kooloob〉などに入れて食べたり、若い根茎を薄く切って1種の料理〈Trantjam〉に入れたりもする。花序もひたしもの〈Sayur lodeh〉や野菜の混ぜ煮〈Oorab〉とし、飯の総菜にする。またときに薬草、染料にも利用する。

    5)Curcuma purpurascens BLUME  
      (インドネシア)  [ジャワ]Temos tis  インドネシアの原産で、若い茎の芯を生で、あるいは冷野菜Lalabとしてカレーライスに添えて食べる。

    6)Curcuma rotunda LINN 
      (ベトナム)  [コーチン、アンナン]Ngai mia  インドシナ半島の原産で、同地方では古くから使用されたが、これは根茎を食品の着色料、または香辛料として利用するものであるといわれる。

    7)Curcuma xanthorrhiza ROXB  
      (マライ)Temu lawas,Temmu rays  
      (インドネシア)  [ジャワ]Temu lawak,  [スンダ]Koneng gede  マレーシアの原産で、Curcuma zedoaria ROSC.にきわめてよく似ているため、文献では時に混同されている。本種は通常等身大に生長し、根茎も大きい。ジャワでは各地に栽培され、チーク林にしばしば野生をみるが、野生種は栽培種と比べて味と香りが少ない。
    マライでは栽培種のみで、根茎の香りは刺激性で味は苦いが、煮るとなくなる。根茎のでん粉は粥〈Porridge〉や菓子〈Pudding〉にする。花序も通常ひたしものにし、混ぜ煮に調理して総菜として食べる。また、広く薬用とされ、象のあらゆる病気にも薬として使われる。

    8)Curcuma zedoaria ROSC  
      (英)Zedoary 
      (インド)  [サンスクリット]Karchura,Sati,  [ヒンズー]Kachura,  [ベンガル]Kachura,Shori,  
             [テルグ]Kich-chili-gaddala,Kacho-ram,  
             [マラヤラム]Kach-cholam,Kach-churi-kizhauna,Pula-kizhauna,  
             [カンナダ]Kachora,  [タミル]Kichchilik-kizhanghu,Pulan-kizhanga,  
      (ドイツ)Zitwer 
      (フランス)Zedoire 
      (スペイン)Cedoaria  
      (中国)[華南]Kiam hiam,ガジュツ[莪述]  
      本種はインドのベンガル地方、東部ヒマラヤ地帯、および南部のインド洋沿岸カナラ〈Kanara〉地方などの落葉林中に原産したもので、インドを初めスリランカ、インドネシア、マダガスカルなど広く熱帯地方に栽培されている。
    宿根草本で、根茎は大きく円筒状、内部は淡黄または白色である。葉は長さ0.5〜1mの長円形で両端は細まっており、下面の中肋部には紫の着色があり、葉柄は葉身よりも長い。夏日には穂状の花序を出し、花苞は卵円形で緑色であるが、かすかに紅色になることがある。花は淡黄色で漏斗(ろうと)状、果実は3稜形で平滑である。  
    根茎には芳香があり、特にベンガルや南インドではカレーの香料としてだけでなく、根部のでん粉〈Shoti starch〉を、アロールート〈Arrowroot〉および大麦代用の食糧や菓子に使い、若い茎の芯は生で、あるいは調理し、野菜として食用にする。根茎には1〜1.5%の精油を含むが、これはセスキテルペンアルコール〈Sesquiterpene alchol 〉48%、シネオール〈Cineol 〉9.6%、カンフェーン〈d-Camphene〉 3.5%などで、樟脳(クスノキからとった結晶)の様な香りと、苦くて辛い味がする。根茎を涼性鎮痛剤などとして使用し、またインドでは婦人の化粧料、あるいはアビル〈Abir〉といってヒンズーの祭〈Holi〉に際してその赤い粉を使う。ちなみにわが国へは亨保年中(1716〜1735)に中国から渡来して官園に栽培され、その後明和年中(1764〜1771)琉球から渡来したものが京阪地方で植えられたが、冬を超さずに枯れたとの記録がある。ガジュツは漢名によるもの、別名シロウコン(袖珍鑑)、ウスグロ(中山博信物産考)などの名がある。
    俗に弘法大師の石芋といって販売され、健胃剤として効ありといわれた。  




    ■栽培

    ターメリックは熱帯モンスーン落葉林帯に原産したもののようで、暖かい湿度の多い気候に適し、通常年雨量1000〜2000mm、標高1200mまでの地帯に栽培されている。土壌は壌土または沖積の腐食に富む膨軟な肥沃地をよしとし、水の停滞を避けなければならない。
    インドにおいて多湿の地では水稲、甘蔗、バナナなどと3〜4年に1回の輪作、通常の園土では甘蔗、唐辛子、タマネギ、ニンニクその他の野菜類、ときに小麦、シコクビエ、トウモロコシ、マメ類などの畑作物と輪作されている。グジャラート〈Gujarat〉ではショウガに次ぎ、その他の地方ではヤマノイモ、ショウガほか野菜類につぐ主要作物となっており、ときにヒマ〈Castor〉やキマメ〈Tur〉がターメリックに日蔭を与える目的で植えられる。西ベンガル〈West Bengal〉ではターメリックがマンゴ〈Mango〉、ときにパラミツ〈Jack〉やレイシ〈Litchi〉などの果樹の間作に栽培され、西部海岸地方〈West Coast〉ではココヤシ〈Coconut〉園の間に作られている。  
     繁殖は根茎を分割して行う。側根茎の方が親根茎よりも発芽がよく、収量も多い。種苗にする根茎〈Setts or Fingers〉は、長さ5cm前後はあって、少なくとも1個の健全な芽が着いていなければならない。時に湿ったわらの下で発芽させてから植えこむことがある。種苗〈Fingers〉の所要量は、大体haあたり平均1700kgであるが、果樹園の中へ間作する場合は、450〜560kg程度である。インドにおける播種(はしゅ)期は4月末から5月にかけての時期で、通常畦(うね)幅30〜45cm、株間15〜30cm、深さ7.5cmに植えるが、密植すると収量は増える傾向がある。植え付け後4週間以内に葉が地上に現われる。生育中の管理は乾燥時の灌漑(かんがい)が重要である。  
    収穫期は1月から4月の間で、根茎を傷つけないよう通常手で掘り上げる。収穫の数日前に地上部を刈り取っておくが、次回の種苗用に畑の一部は少なくても1ヶ月間そのまま残しておく。根茎の収量は通常haあたり13〜15tであるが、施肥や灌漑などの条件が整っている場合には、その数倍の収量をあげることができる。根茎についている地上部を取り去り、きれいに洗ってから、親根茎〈Bulbs or Rounds〉と側根茎〈Side rhizomes or Fingers〉を分離する。生の根茎をそのまま利用することもあるが、通常輸送販売用には、土製の大きい鉢か鉄なべの中で1時間ばかり煮て、発芽力を抑えてから乾燥する。親根茎の大きいものは割り、また水に少量の牛ふんを加えて煮ることがある。  
    乾燥は煮て軟らかくなった根茎を脱穀場に広げ、10〜15日間陽光下で行う。付着している根や鱗片などは、この間に手できれいに除く。次に竹製のザルへ花崗岩の小石と共に入れ、揺り動かしてみがく作業を行う。
      現在インド農業省やマドラス地方では、この作業に使用するターメリックみがき器〈Polisher〉が工夫されていて、労力や時間を節約することができるようになった。この際に生じた黄色の細粉は水田の肥料として使われている。乾燥品の重量は生根茎〈Green or Raw turmeric〉の17〜25%である。でき上がった製品はさらに親根茎〈Bulbs or Rounds〉、側根茎〈Fingers〉および割片〈Splits〉に区分して出荷する。  インドにおけるターメリックの病害で最も被害の大きいものは 

    1)Leaf spot,Taphrina maculans BUTL.で、葉に深黄色はん点を生じて枯らす。
     
    2)Colletotrichumcapsici(SYD.)BUTL.&BISBYも同じくLeaf spotを起こすが、そのはん点は緑白色で縁辺褐色である。

    3)Pythium graminicolum C.B.SUBRAM.は、根茎および葉の腐敗を起こす。害虫で被害の多いのは    Shoot-boring caterpillar,Dichocrosis puntiferalis GUEN.で、これは主軸を腐食させるに至る。




     
    ■利用

     ターメリックは東洋熱帯の人々が常食としているカレー〈Curry〉の香辛着色料として重要なもので、その黄色と麝香様〈Musky〉の香り、またわずかながらその辛味がカレーの成分として役立っている。またターメリックの粉末は食品添加物として各種料理や菓子に使われ、またカラシ〈Mustard〉の混ぜ物に、ときにはその代用品となる。  
      染料として使用するには、原料の根茎〈Kachcha haldi〉を煮てから突いてのり状とし、その汁を沸騰させた中へ絹、木綿、羊毛などを直接ひたして染色する。淡黄色ないし橙色に染めあげることができ、これは水で洗ってもおちないが、光線によって色があせやすい。
    ただし媒染剤〈Mordant〉として明礬〈Alum〉を使うと永持ちさせることができるが、一般にターメリックは他の染料すなわちアル〈Al=〈Morinda tinctoria ROXB.〉、ベニバナ〈Safflower=Carthamus tinctoria LINN.)あるいはキアイ〈Indigo=Indigoferatinctoria LINN.〉などの補助剤〈Auxiliary〉として使用されることが多い。1884年コンゴレッド〈Congo Red〉が発見されて以来、染色業者によるターメリックの需要が減り、東洋で地方的な利用が残っているのみであるが、まだ絨氈〈Carpet〉の染色や、インドではキャラコ捺染〈Calico-printing〉に用いているほか、皮革、ヤシ繊維、きびがら細工のおもちゃなどを染めたり、時に婦人が化粧品として使ったりしている。なおターメリックの色素はアルカリで赤褐に変色するため、これを塗った試験紙〈Turmeric or Curcuma paper〉が、分析試験に利用されている。  
     ターメリックの乾燥根茎を生薬学では鬱金〈Curcumae Rhizoma〉といい、穏やかな芳香性刺激剤〈Stimulant〉で、外用として痛み止め、内用として各種疾患に適用される。ヒンズーやマホメット教徒はターメリックが黄色であるところから、黄胆や肝臓炎に効くものとして服用した。インドにおけるターメリックの分析結果は水分13.1%、たん白6.3%、脂肪5.1%、炭水化物69.4%、灰分3.5%、繊維2.6%などとなっている。また蒸留によって揮発性で芳香のある橙赤色の精油1.3%〜5.5%を得るが、その主成分はターメロン〈Turmerone〉、黄色の色素はクルクミン〈Curcumin〉およびその誘導体、そしてでん粉の含量は30〜40%となっている。  
      その他アジア熱帯では、慣習としてターメリックで着色した米や木綿を結婚式や祭りに多く使用し、ターメリックをお守り〈Protective charm〉にしている。粉末はアリ穴の周りにまいて駆除に利用し、根茎や根からは1種のでん粉〈Indian arrowroot〉を採ることができる。

     

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